河田 里美 — 花詰で紡ぐ、静かな彩りの物語
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まるで花束のような彩り
河田里美さんが描く「花詰」は、花々を隙間なく敷き詰め、金彩で縁取ることで華やかさと立体感を持たせる九谷焼の技法です。洋絵具を使うことで柔らかい発色を実現し、水彩画のような軽やかさと金彩の煌めきが調和する作品は、多くの人を魅了してやみません。

一点一点に込められた想い
河田さんの作品は、驚くほど時間をかけて仕上げられます。それは単なる緻密さではなく、一つひとつの花やモチーフに心を込めているから。
印象的だったのは、KASHIKOとともに最初に制作した「藤と燕のメッセージカード」。表面と裏面の両方に藤の花が描かれているのですが、裏面の花の色彩は意図的に少し落としてありました。その理由を尋ねると、燕の子どもが成長していく流れを花の色で表現したのだと教えてくださいました。作品の中に「命の時間」を重ねる、その繊細で豊かな感性に深く感銘を受けました。

花を描く眼差し
河田さんは花をただ美しい模様として描くのではなく、その構造や生きるリズムまで丁寧に観察します。花びら一枚ごとの光と影を描き分け、そこに時間の流れや季節の息遣いを感じさせる。だからこそ、彼女の作品は観る人の心に深い余韻を残します。
KASHIKOとの共鳴
KASHIKOの理念「静けさと美を日常に」は、河田さんの制作姿勢と深く響き合います。小さな器やカードに込められた豊かな彩りは、暮らしのなかでふとした瞬間に心をやさしく整えてくれる存在です。

略歴・経歴
1999年:広告代理店に勤務。
2005年:石川県立九谷焼技術研修所 本科 卒業。
2007年:日本工芸会 正会員となり、中村陶志人氏に師事。
2017年:伝統工芸士に認定。金沢美術工芸大学で「花詰」講師、石川県立九谷焼技術研修所で「薄絵」講師を務める。