
柴田有希佳 - 文様と色彩に、生命を宿す。
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伝統を、優雅に再解釈する
石川県能美市に生まれ育ち、金城短期大学で美術を学んだ柴田さんは、石川県立九谷焼技術研修所で本格的な訓練を受けました。
そこで彼女は、九谷焼作家・山田義明氏に師事し、古典的な九谷の技法を深く学びます。
しかし、柴田さんの作品を特別なものにしているのは、伝統に現代的で繊細な感性を重ね合わせている点です。
女性らしいやわらかさと、静かな力強さ。その線は精緻で、色彩は繊細でありながら鮮やか。
それは伝統的でありながらも、決して過去のものではありません。
生命を描く
柴田さんの絵には「息づかい」があります。ただの意匠ではなく、存在感があります。
筆の動きは優しくも意志を感じさせ、色は控えめにきらめきながら、背景に溶け込むことはありません。
金魚、花、鳥、草といった自然のモチーフを好んで描く柴田さん。
一見シンプルな題材も、彼女の手を通すと物語になります。
布の上を泳ぐ金魚は、水とともに記憶まで揺らめいているよう。
咲く花は、一瞬の静けさを抱えているかのよう。
それは、かつてどこかで見たことのあるような、記憶の端にある景色のようです。
彼女が描くのは単なるかたちではありません。
光のやわらかさ、空気の気配、言葉にならない時間の感触——自然が持つ感情そのものです。
九谷五彩(青・黄・赤・紫・緑)も、常に意味を持って使われ、装飾ではなく「響き」を生み出します。
彼女の作品は主張しすぎず、そっと心に残ります。
KASHIKOとの出会い
KASHIKOと柴田さんの出会いは、あるギャラリーで目にした小さな香合から始まりました。
その存在感は、小さな器でありながら、静かで、優雅で、そして忘れがたいものでした。
この出会いをきっかけに、コラボレーションが始まります。
金魚を描いた風呂敷、季節の花をあしらったノート、やさしいモチーフのしおりやカード。
それらは単なる印刷物ではなく、長い伝統を宿した「暮らしの中のアート」です。
柴田さんの筆が、九谷焼を超えて日用品に命を吹き込んでいきます。
ひとつひとつの作品に、彼女の視線と静けさが息づいています。
伝統と日常のあいだに
柴田有希佳さんは、私たちに教えてくれます。
伝統とは、決してガラスの中に閉じ込められたものではなく、手に取り、共に暮らしていくものだと。
彼女の絵は、鑑賞するものではなく、親しむもの。
彼女が描いた風呂敷を包むとき、その感性を手のひらに感じる。
彼女の文様が入った便箋に書くとき、美しさが日々の中に静かに染み込んでくる。
KASHIKOは、そんな静かなつながりを大切にしています。
そして、柴田さんのような作家たちの仕事を紹介できることを、心から誇りに思っています
柴田 有希佳(しばた ゆきか)– 作家プロフィール
石川県能美市出身の九谷焼絵付作家。
金城短期大学 美術学科 卒業
石川県立九谷焼技術研修所 修了
九谷焼作家・山田義明氏に師事